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Norm

アルバム ∙ オルタナティブ ∙ 2023

「僕は常にフィクションを書いてきた」と、トロント出身のシンガーソングライターAndy ShaufはApple Musicに語る。「(2016年の)『The Party』を制作していた頃は、たくさんのパーティーに行っていた。(2020年の)『The Neon Skyline』を制作していた頃は、Skylineという名のバーで飲んでいた。今となっては少し想像力に欠けていたように感じるけれど、僕はみんなから言われたことをやろうとしていたんだと思う。それは、知っていることについて書くということ。もし一歩前進したければ、自分の知っていること以外のことを書く必要があるんだと気付いたんだ」

過去の作品と同じように、Shaufの8作目のソロアルバム『Norm』はその中心人物にルーペを当てているが、それぞれの物語は一連の語り手によって伝えられる。その理由の一つは、Shaufが曲作りを始めた時点でコンセプトがまったくなかったことにある。「僕はこのアルバムのタイトルを『Norm』にしようと決めていた。これは一連の普通の曲を集めた普通のアルバム(normal album)になるはずだった」と彼は語る。しかし、「Telephone」を書いた時点で、ストーリーラインに種が植え付けられた。「それは電話で話したいと切望している人についての話だった」と彼は言う。「それは、視点が反転して、電話をしながら窓をのぞき込んでいるストーカーのような雰囲気が漂うんだよ。これはキャラクターになり得ると思って、ノーム(Norm)と呼ぶことにした」。作詞作曲から全楽器の演奏、レコーディングまで、すべてを自分でこなすShaufは、友人からの助けを借りて物語をつなぎ合わせ、常に神が存在する中で増していくノームの不気味さを細部まで描いた。(Shaufはサスカチュワンという小さな町でクリスチャンとして育ったが、現在は自分を信仰深いとは考えていない)。

「ノームはいたって普通の男だと思う」と彼は語る。「彼はちょっとおかしな人で、浮世離れした一面を持っている。そして、かなりシリアスな問題を抱えている。非常に共感できる人物として登場するんだけど、ある時点で、それまでに起こったすべてに対する捉え方を覆しかねない変化が生じるんだ」。ここでは、ノームの物語がいかにして形成されていったのか、Shaufが曲ごとに解説する。

Wasted on You
僕は旧約聖書を読みながら、神が語り手として自らの不完全な一面を説明するような、視点を反転させることができそうな物語を探していた。神とイエスの間の会話を思い描いていた。僕はキリスト教、あるいは、ただのアニメのキリスト教を熟知しているから、これが最も分かりやすい、“神が語り手です”というような物語だと思っていて、少し曖昧なところが気に入ったんだ。

Catch Your Eye
これはノームを最初に紹介する曲。僕たちは彼の頭の中にいて、切望している姿を捉えようとしている。これは優しい前置きだ。曲が終わる頃には、彼の行動の何かが少しずれていることに気付くはず。

Telephone
これはちょっとしたジョークとして書いた曲。パンデミックのさなかで、僕は誰かとつながろうとしていて、僕らはよく電話で話していた。そして、話題がなくなることも多かった。僕はだんだん怖くなってきた。最初は電話が本当に大好きに見えるような曲を書こうと思っていたんだけど、最後は疑問がたくさん出てきたり、方向転換したりするんだよね。それでもまだ、ラブソングとして読めると思う…曲の後半に注目しなければ。

You Didn't See
ノームと神の関係が説明される瞬間を用意する必要があった。神の監視下にありながら、なぜ自分がやっていることから逃れようとしているのか、ここである程度は垣間見ることができるはず。つまり、これは神の視点から書かれた曲なんだ。

Paradise Cinema
木陰に立っているノームを見つめる神の視点から始まり、神はこの曲まで彼を見守り続ける。これはダラダラした…複数人で映画館へ向かう、日曜の午後の散歩みたいな感じなんだ。 

Norm
当初はノームがサンドイッチを買うために列に並んでいる様子を書いたんだけど、曲の中の物語が最悪だと気付いた。でも、それはまた、神が関わる物語にはある種の神の介入が必要だし、あるいは、神には自分自身を知ってもらう必要があると思ったから。だから、神はノームを救ったこともあるかもしれないけれど、この場合は、彼のやっていることはもう許されないのだと伝える必要があった。そして同時に、『プライス・イズ・ライト』(クイズ番組)を観ながらごろごろしているノームの姿を描いただけなんだ。

Halloween Store
次のアルバムはディスコサウンドになると思っていた。僕はある時点で、なんというか、マンガの音楽のようなものを作っていたんだ。この奇妙で昔懐かしいマンガを描いている自分自身の風刺画みたいな感じかな。マンガの音楽という言い方が一番しっくりくるね。この曲はそういった曲と一緒に書いたもので、超高速のトライアングルと4つ打ちのダンス風のビートが含まれている。最初の二つのバースは長い間温めていたもので、ノームの世界に居場所を見つけるまで、ずっと取ってあった。物語の中で、これはノームが待ち望んでいたことがついに実現する瞬間なんだけど、それが起こるかどうかも彼は分かっていないんだ。

Sunset
これは「Halloween Store」で起こった出来事の続きで、真実としては良すぎる話だし、あまりにも簡単に起こってしまう。僕はどうしてそんなことが可能なんだろうと不思議に思われるほどシンプルな曲にしたかった。あるいは、それは今起こっているひどい出来事であり、ひどくなることを意図していなかった、あるいは、まったく重みを持たせるつもりのなかった出来事の結果だ。それを反転させた視点が、次の曲で起こることなんだ。

Daylight Dreaming
これは僕にとって、アルバムの中で最も大変な部分だった。基本的には誰かにいたずらを仕掛けようとしている人を描いていて、この人たちの間には歴史があり、特にこのいたずらには歴史がある。でも、今回はまったく意図せぬ事態に発展し、ノームにチャンスが与えられるんだ。  

Long Throw
僕らは同じ視点を貫いている。この物語をどうやってまとめるべきか苦労したんだけど、インスピレーションを求めて『マルホランド・ドライブ』を観ていたら、あるシーンで映像がフリーズするという奇妙な出来事が起こった。僕はそれを5分ほど観ながら、自分は狂気に満ちたクリエイティブな選択肢を観ているのだと考え、あの映画のプロットの中で、そのシーンから多くの意味を受け取った。この物語には、歌詞や物語に書かれる必要がまったくないエンディングがあることに気付かされた。それはとてもシンプルな物語で、この曲はそのエンディングであり、三つ目の視点は、ただ電話がかかってこないという状態なんだ。

Don't Let It Get to You
シンセサイザーを使ってたくさんの曲を書いていた僕は、とにかくできる限り雰囲気を活用しようとしていた。この曲は物語の要約で、その中には偶然の出来事がたくさんあり、ある決断が他の決断に影響を与えている。これは「こういったことも起こるけど、気にしてはいけないよ」と語る、残酷な神の心情なんだ。でも、僕がこの曲でもう少しやろうとしていたことは、ほぼ即興でメロディーを導くことだった。メロディーを書く代わりに旋律を演奏していると、それが旋律になる。僕はただ、その瞬間が過ぎ去るまで演奏し、それを再構築して、ハーモニーを加えたりしたんだ。

All of My Love
これは三つの視点すべてを記録したような曲。この物語にテーマがあるとしたら、それは欠陥だらけの愛、もしくは、愛とは何か、または愛が何になり得るかについて。それぞれの視点が同じ疑問を問いかけている。基本的に、音楽的には1曲目と同じ構造だけど、とてもダークなバージョンへと変化していく。ノームの物語が少しずつダークになっていくように映し出されているとしたら、音楽でも同じことをしているんだ。最初はとても感じの良いサウンドなんだけど、おそらく後半になると音楽も少し横道にそれていき、不吉な要素が出てくるんだ。

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